揚げ物用の鍋で遊ぶ
揚げ物用の鍋を洗い終えて片付けようとしていた時の事だ。
視線を感じてパッと後ろを振り返る。
長男がジッと私が片付けるところを見ていた。
揚げ物用の鍋に興味を持っているようだ。
片付けても出されそうな予感がした。
他の鍋やフライパンなどを出されて私が片付ける事になったら面倒である。
扉が開かないようにストッパーをかけた。
これでひと安心である。
しかし、私がトイレに行っている時。
『ガッシャン!ガッシャン!』と何だか騒がしい音が聞こえてきた。
もしかして…!?
急いで見に行く。
ストッパーは開けられて、長男は揚げ物用の鍋を出してきていた。
それだけではない、調味料のボトルも全て出されていた。
ストッパーをいつの間にか外せるようになっていたようだ。
私の顔を見た長男は
「あ…ママに怒られる!!」という感じで一瞬固まり、身構えていた。
長男が自分で片付けるのなら特に怒るつもりは無い。
私は、「出しても良いけど、きちんと自分で全部お片づけしてね」と言った。
「うん!」と言って、長男はまた遊び始めた。
幸いなことに、調味料のフタは開けられていない。
調味料のフタをはずしてはいけない事を理解しているようである。
次男も長男が出してきた鍋や調味料をジッと見ていた。
長男がガッシャン!ガッシャン!と、音を立てているのが気になるようである。
長男も次男も楽しそうである。
ただ、一つだけ困った事がある。
うるさいのだ。
少し放っておけば気が済むだろうと思っていたのだが徐々にヒートアップしていく…。
私は耐え切れず、
「鍋も調味料も遊ぶ物じゃないの!騒がしくて近所の迷惑になるよ。うるさくするのならお片づけしてね。」
と言った。
片付け始めたように見えて安心した。
だが、長男はチラチラと私を見ながら、
怒っている私を笑わせようと反撃してきた!
揚げ物用の鍋のフタを使ってライオンのようなポーズをしていた。
澄ました顔をしたまま全く動かない。
私は思わず「なにそれ!ライオンかな?扇風機かな?」と言ったら、長男は動き出した。
長男が「うふふ〜」と言って走り回ろうとした時。
つけていたテレビからアニメの音楽が流れてきた。
長男は「ガングー!ガングー!(訳 : ピングー!ピングー!)」と言った。
長男が大好きなピングーのアニメが始まったのだ。
私はその瞬間にテレビを消した。
長男は「ベービ!ベービ!(訳 : テレビ!テレビ!)」と、テレビをつけるように言い始めた。
私は「テレビを見るならお片づけしてからにしようね!」と言った。
…途端に長男は驚くくらいに素早く片付け始めた。
1分もかからなかったはずだ。
さらに驚いた事に、綺麗に片付けて扉を閉めて丁寧にストッパーまでしてくれた。
戻ってくるなり「ベービ!ベービ!(訳 :テレビ!テレビ!)」と長男は連呼する。
私は約束通りテレビをつけた。
長男は満足な様子である。
その後、十分に気が済んだのか揚げ物用の鍋を出してくる事は無くなった。
今までは、
部屋の中がゴタゴタと散らかっていくのが嫌で適当に理由をつけて「片付けて!」とすぐに言っていた。
しかし、満足する前に取り上げてしまうと、後日また繰り返して習慣になり逆効果であった。
長男の場合、「それは出しちゃダメ!やめて!」といくら言っても聞かないのである。
だが、少し好き勝手させてみると不思議な事にそれっきりしなくなった。
これから、
長男が次に何か新しい行動を起こそうとする前に片付けを促していこうと思う。
その方が、納得してすぐに片付けてくれるのだ。
何よりも長男が次の行動をするのは満足した証拠である。
外出先では何でもかんでも自由にさせる事は難しい。
でも、家の中ではある程度は自由にさせて様子を見てから対応していきたい。